
去る2010年7月4日および5日の2日間、兵庫県下において、「疏水フォーラムinひょうご2010〜水がつなぐ人と地域 疏水が結ぶ今昔〜」が開催されました。

2010年7月4日(日)、5日(月)の2日間にわたり、第5回目となる疏水サミット「疏水フォーラムinひょうご2010〜水がつなぐ人と地域 疏水が結ぶ今昔」が実行委員会(近畿農政局、兵庫県、全国土地改良事業団体連合会、疏水ネットワーク、兵庫県土地改良事業団体連合会、東播用水土地改良区、兵庫県淡河川・山田川土地改良区、兵庫県東播土地改良区)の主催、神戸市他の後援で開催され、全国の疏水を管理する水土里ネットなどの疏水ネットワーク会員をはじめ、行政関係者、兵庫県内の一般市民などおよそ450名の方々が参加されました。
疏水サミット(疏水フォーラム)は、平成18年2月に農林水産省が疏水百選(110地区)を選定したことをきっかけに、疏水関係者の情報交換と一般の方に疏水の現状と役割を理解していただくために、同年10月に青森県十和田市において第1回サミットが開催されました。その後、石川県、北海道、熊本県で開催され、今回で第5回目になります。
今回の開催地である兵庫県の南部地域は、全国的にみても雨の少ない地域であり、農業用水を確保するために先人の苦労により川から水を運ぶ疏水や多数のため池、水路が一体となったネットワークを構築してきたところです。そして、これらの水のネットワークを保全する活動が、ため池を中心にその上下流を結ぶ施設全体へと広がりつつあり、近代化産業遺産の認定や重要文化財の指定を受ける動きへと展開を見せています。
今回のフォーラムは、都市住民、次世代の若者も参画し、循環する水のネットワークを地域の貴重な資源として未来へ引き継ぐ人のネットワークづくりを目指して開催されました。
4日は神戸市の兵庫県公館においてフォーラムが開催され、兵庫県立農業高等学校の演劇部のみなさんによるオープニングアトラクションを皮切りに、第1部では「水ネットワークの再発見」と題した有識者3名による鼎談、第2部では「循環する水の路」と題し有識者による講演や地元小学生による淡山疏水を題材とした本の読書感想文の朗読などが行われました。

兵庫県南部のいなみ野台地を舞台に、疏水建設にかけた人々の想いや、疏水により地域農業が守られていることを伝える演劇が上演されました。

平成7年の阪神・淡路大震災から15年を迎え、復興を果たした兵庫の地で本フォーラムを開催出来ることへの感謝を述べるとともに、北は日本海から南は太平洋まで広大な県域を持つ兵庫県にあって、特に瀬戸内の小雨から農業用水を確保するためにため池や疏水をつくり水のネットワークを築き上げてきたこと、現在もこの貴重な財産を維持するために各地域で様々な活動に取り組まれており、このフォーラムを契機に国民、県民に再認識して頂きたいと述べられました。

開催県を代表しての歓迎の挨拶の中で、兵庫県は森林の保水力や防災力を発揮させるために県民税に超過課税を行っていることや、ため池を周辺地域の憩いの場や自然の宝庫ととらえたため池ミュージアム構想を進めていることなどに触れ、二種兼業農家が多く集落営農を積極的に進めている兵庫県らしい農業の展開を見ていただきたいと結ばれました。

挨拶の中で、気候変動の影響によって今後食料需給の逼迫が予想されるが、我が国の農業水利は先人の知恵と汗、涙の結晶で築かれ、食料の安定供給に非常に大きな役割を果たしていると話されました。また、開催地の兵庫県では「農地・水・環境保全向上対策」に力を入れて推進しており、地域コミュニティが再生されてきているのではないかと述べられました。そして、疏水の意義は、食料の安定供給と地域コミュニティの再生にあり、今回の疏水フォーラムを通じて疏水の存在をより多くの方に知ってもらい、疏水を地域の貴重な資源として、未来へ引き継ぐ取組につながることを願うと結ばれました。

鼎談は、疏水百選選定委員会の座長を務めた林良博東京農業大学農学部教授と、同じく選定委員で写真家でもある織作峰子氏に、地元の県立淡路園芸学校校長でもある中瀬勲兵庫県立大学大学院教授を加えた3名により、「水ネットワークの再発見」をテーマとして行われました。 織作氏は、国内の疏水の写真に自身が撮影した世界各地の水辺の風景の写真を織り交ぜて紹介し、美しい日本の疏水の風景について解説され、世界各地で水を確保することの重要性が注目されていく中で、水をいろいろな工夫をすることによって人々に潤いを持たせるとともに、食料生産につながる疏水を考えていただきたいと語られました。 中瀬氏は、地元兵庫の水のある風景に世界の水辺の風景も加えて、水によって地域と地域がつながり、人々をつなぎ、地域社会の心を育む、さらに歴史文化をも育むといった話をされ、かつて、地域社会は自然と水との関わり合いの中で知恵や技術が育まれ地域のマネジメントを行っていたが、これを再構築する必要があると訴えられました。 林氏は、最後に、このフォーラムは毎年行って先人の遺業を決して忘れないで疏水の役割を再認識することが必要である。そして、再認識した上で、いろいろな人が疏水に関わるような仕組みづくりが必要になると結ばれました。

第2部は、兵庫大学ため池研究所所長の池本廣希氏がナビゲーターとなって進行されました。

自身の作家としてのデビュー作の舞台となったため池に纏わる話から、米づくりの歴史や文化に関する話をされた後、いなみ野台地と淡山疏水の歴史や役割に触れ、淡山疏水は地元の人達が私財を投じて作った値打ちのある疏水であり、先人の苦労を大事に残し、その人達が何を求めて、どんな豊かさを夢見て水を一滴引いてきたか、その過去に立ち返ることから水の恵みへの感謝につながると結ばれました。

地元小学生が、淡山疏水の歴史をまとめた「水をもとめて」という本を読んで書いた読書感想文の中から、優秀作品に選ばれた9名に対して、いなみ野ため池ミュージアム運営協議会から感謝状が授与されました。 また、受賞者を代表して、明石市立魚住小学校の今岡春さんが感想文を朗読しました。

兵庫県のため池と疏水を合わせた水利システムのユニークさについて、日本一ため池の数が多い兵庫県において疏水の開発とともにため池が築造されてきた歴史に触れ、淡河川・山田川疏水の開削においてもこの手法が活用されていると説明されました。そして、ため池と疏水を合わせた水利システムは、一度利用した水が水路を通って下流のため池に入り繰り返し使われる循環のシステムが構築されており、さらに近年では東播用水事業によって安定的な水資源の供給と水利システムの集中的、一元的な管理が行われるようになったとし、ため池や疏水の多面的な機能の便益を農家だけでなく非農家も含めた地域住民全体で享受していると結ばれました。
2日目は現地研修が行われ、東播用水や淡山疏水の施設、加古大池などの視察に多くの方が参加されました。