新・田舎人25号

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新・田舎人インタビュー
忍び寄る生活習慣病の影、 いま見直される健康食としての"ごはん"

高木 賢さん(農林水産省食糧庁長官)

栄養バランスの偏り、生活習慣病の増加、食料の浪費など、最近の食生活の乱れはさまざまな問題を生んでいる。高木食糧庁長官は「国民の健康を考える上でもっとごはんが見直され、評価されるべき」と力説されている。

※文中敬称略

写真:髙木賢氏 高木 賢さん(たかぎ まさる)
昭和19年、群馬県に生れる。昭和42年、東京大学法学部卒業後、農林省へ入省。平成11年7月食糧庁長官に就任、現在に至る。

高木/いま、生活習慣病が大問題となってきています。日本人は1年に約90万人が亡くなっていますが、2/3にあたる約60万人はガン・心筋梗塞(しんきんこうそく)・脳卒中(のうそっちゅう)など、昔でいう成人病、現在でいう生活習慣病を死因としているのです。では生活習慣病はなぜ起きるのかというと、結局は食生活の乱れにいきつきます。
しかも、かつては成人病といわれたように、これらの病気はある程度の年齢に達してかかるものでしたが、いまや子どもたちもその例外ではなくなりつつあります。大人ばかりか子どもの食生活も乱れていますから、子どもの段階から食生活の正しい習慣・知識を身につけるように取り組まないと、将来的にもタイヘンな問題です。

―現在の食生活で一番注意しなければならないことは?

高木/脂質のとり過ぎ、一方で穀類の摂取が足りないということでしょうね。これは表裏一体の問題です。脂質のとり過ぎは肥満、高血圧をはじめ糖尿病、脳や心臓の病気などにつながり、生活習慣病のもっとも大きな要因となります。

―脂質を抑える。では何からカロリーをとるかということになりますが。

高木/理想的なカロリー摂取でいえば、脂質は25%以下、逆にデンプン質(炭水化物)からの摂取を25%以上にすることが望まれます。そこで"ごはん"が注目されるのです。

――イモや小麦などもデンプン質ですが、ごはんはそれらと比較して特徴があるのですか?

高木/ごはんは粒で食べます。これが一番の特徴でしょうね。粒で食べることによって消化・吸収がゆっくりになります。そうしますと血糖値の上がり方は緩やかになりますね。ゆっくり持続的に糖分が消費されますから、人間の活動の源となるエネルギーとして理想的なものではないでしょうか。
しかも消化・吸収が穏やかですから、インスリン(血糖値の上昇を抑制するホルモン)の分泌をあまり刺激しません。インスリンは食べ物をを脂肪にして身体の中に貯めこむ性質ももっています。だからインスリンの分泌を刺激しなければ、太りにくく、肥満や糖尿病の予防にも有効というわけです。また、ごはんは消化に時間がかかりますから腹もちがいい。日本人はあまりに身近過ぎて、ごはんがもつ健康面での素晴らしさに気づいていない。
ごはんの良さはまだほかにもありますよ。ごはんの中にはレジスタントスターチ(難消化性デンプン)という成分が含まれています。これは整腸作用をもつ食物繊維と同じような働きをするもので、便秘や大腸ガンの予防に効果があるといわれます。
そしてもう一点、ごはんが良質なたんぱく質であることはいうまでもありませんが、塩分やコレステロールを含んでいないということが大きい。高血圧や心臓病などの予防につながります。とくに日本人は塩分をとり過ぎるといわれますから、ごはんはいいですね。
ごはんの良さは健康の面だけではありません。食事を楽しむという面でも、もっと評価されるべきだと思いますね。ごはんは調理しやすい上に淡白な味で、和食・洋食・中華など、どんな食材、どんな料理にも合います。さまざまなものと組み合わせることができ、栄養バランスはもちろん、食文化の豊かさという面でも誇れる主食じゃないでしょうか。

(この記事は「新・田舎人」25号のインタビューを抜粋したものです。)


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