新・田舎人24号

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新・田舎人インタビュー
人間と自然が共生する中で、立派な本物の作物ができる。

中村 攻さん(千葉大学教授)

地域計画がご専門の中村先生は、環境の悪化・資源の枯渇・犯罪の多発など病理的な様相を見せはじめた"都市を救うのは農村しかない"と主張されている。そのためには、都市と農村の交流を縦軸に、農山漁村の美しい景観・環境を横軸に、その交点としてグリーン・ツーリズムへの取り組みを提唱されている。

※文中敬称略

中村攻氏 中村 攻さん(なかむら おさむ)
1942年生れ。工学博士。千葉大学緑地・環境学科教授、地域計画学専攻。

―「グリーン・ツーリズム」という言葉の意味をお教え願えますか?

中村/「グリーン・ツーリズム」というのは和製英語で、簡単には"農村で休暇を過ごそう"ということですね。もう少し中身を考えると、都市の側からは、新しい休暇の過ごし方をしましょう、ということです。お金をつかって避暑地で過ごすバカンスではなく、自然(農村)の懐でゆっくりとる休暇ですね。
逆に農村の側からは、新しい産業おこし、地域おこしということになる。地域によっては農業だけでは食べていけない、農業の現状があります。けれども、そこで都市から工業などを誘致するのではなく、農家が農村にある資源・資材を活用して、農業にプラスアルファの新しい産業をおこしてゆく、そのチャンスとしてグリーン・ツーリズムが注目されているわけです。
履きちがえてもらったら困るのですが、グリーン・ツーリズムは観光施策ではなく、農業政策の一環です。そこが貫かれているかどうかがポイント。農林漁業を守り、地域の暮らしと環境を守るため、農林漁業施策の延長線上になければならない。そうでなければ、従来のホテルや民宿と変わりなく、観光資源の優劣や宿泊施設の新しさ、食事の豪華さなどが選択の基準となり、競争に押しつぶされていく。 農業では食べていけない農家や地域が「農」に関した新しい産業をおこすことによって、農家が地域にとどまり生活し、地域と国土を守っていく。こういう施策のなかにきちっと位置付けられなければグリーン・ツーリズムとはいえませんね。
日本の都市は輝ける成長期を過ぎて、爛熟期、衰退期に入っている。都市は病んでしまった。僕は都市計画もやっていますから、切実に感じます。僕は、そういう都市を救えるのは農村だ、と思っている。農村が都市に向かって「こういう生活の仕方があります」と示すことによって、都市を救うことができるかもしれない。21世紀になって、はじめて都市をリードする農村の時代になるかもしれない。いや、かもしれないではなく、できるか・どうかでもなく、救えなくちゃいけないんです。農村の側にも、何を提供(サービス)したら自分のプラス(利益)になるのかと考えるのではなく、病んだ都市とそこに住む人々のために、自分たちにどんな貢献ができるのか、という視点がほしい。
「農」にかかわる自分と農産物への誇り、生活のし方への誇りをしっかりもって、自分自身がこの地域でどう生きるのかという考え方、知恵と力と技術を基本に都会の人たちと交流していかないと意味がない。金儲けの手段としてやっていると、ブームはすぐ終わります。農村は、都市を再生するために一役買わなければなりません。それは、農村が21世紀に生きていくためにも必要なことであり、農業・農村が存在しなければならない理由だと思います。この問題は、都市にとっても農村にとっても、できるか・できないかではなく、やらなくてはならないこと。そういう考え方で未来を切り拓いていかなければならないと思います。

(この記事は「新・田舎人」24号のインタビューを抜粋したものです。)


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