新・田舎人12号

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新・田舎人

土と親しむことは生活の一部

カズコさんも一緒に田んぼをやられるのですか?

カズコ/ええ。ですが最近は手伝ってくださる方が多くなって、主に食事の世話係です(笑)。

畑とか田んぼのご経験は?

カズコ/まったくなかったですね、まったく。

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音楽的環境を求めて。胡麻へこられたというのはわかるのですが、クラシックのピアニストと田んぼというのが。どうもイメージとして結びつかないのですが...。

カズコ/そうでしょうか?でも海外ではけっして珍しくないんですよ。たとえばドイツなら、ピアニストでも牧師さんでも絵描きさんでも役人の方でも。
家に庭があれば誰でも喜んで大根とか人参とかをつくります。
アパートに住んでいる方でもベランダや。ちっちゃな畑を借り野菜をつくったり。
それが生活の一部なんですね。

確かに欧州では、少しスペースがあると花を植えたり、野菜を育てたり、土と親しむ人は多いらしいですね。

カズコ/そう。それにぜい沢な暮らし方として田舎に住んでいるお金持ちの方も多い。田舎へ行くことがお金持ちのシンボルみたい。そこに生きることが贅沢なこと。ですから、私たちも胡麻へきて、ごく自然に野菜づくりをはじめました。

ライフスタイルとして考えるとき、日本人は柔軟さに乏しいといえるかもしれませんね。人生が一途というか、それだけに先入観をもちやすい。ピアニストと田んぼが結びつかないのも、「ピアニストが田んぼ仕事をするはずがない!」という先入観があるから。

ザイラー/ 田んぼをやるピアニストがいても少しもヘンじゃない。日本の人は物事を急いで決めすぎますね(笑)。職業でもそうです。油絵の人は一生油絵しか描かない。ピカソみたいな人は絵もやるし、陶芸もやる...。
カズコ/ ピカソのような天才は別にして、ひとつのことを一生やるというのは、その人の職業だから仕方ないんじゃない。
ザイラー/ でも、そういう専門家が夜になるとまた別のことをしてもいいんじゃないかな。農業する人が夜になるとピアノを弾いたり...、どれだけ素敵なことか。

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野菜から麦、そしてお米へ

最初は野菜づくり、それが田んぼになったのは?

カズコ/子ども達が京都の学校へ行くようになって、京都とこちらとの二重生活になりました。それに演奏旅行などで長期家を 空けることもあって、畑の世話が十分できなくなりました。収穫もその時々じゃないとダメでしょ。そんなことがいろいろ あって、米づくりを思い立ちました。お米なら集中的な世話でやれるのではないかと。前から興味もありましたし。
ただお米をつくるといっても、日本の場合は農業委員会の許可が必要だったりして、すぐにはできませんでした。

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どうされたんですか?

カズコ/実績づくりのため、近くの休耕田を借りて麦を作りました。麦ならドイツ人の主人にも身近で、パンやケーキもできます。その結果3年目にようやく米づくりを認めていただき、山の中にある田んぼを譲っていただきました。今年で11年目になります。

お米はどの程度とれるのですか?

ザイラー/去年とれたのが1トンと少し。里の田に比べると効率は悪いのですが、ウチとしたらそれでも十分。

友人の方々と熱心に田起こしや水路の掃除をされていましたが、もうすぐ田植え。田植えのときになるとさらに手助けが増え、お祭りのようだとうかがいましたが?

ザイラー/それは賑やか(笑)。ドイツ人、アメリカ人、日本人、友だちが友だちを呼んでお田植のときは100人以上。
カズコ/私たちはある程度楽しみながら、友だちがきてワイワイガヤガヤやる田んぼですから。 田植えのときは宿泊表をつくって、食事は何人分必要かとか、いろんなサイズの長靴を用意したり、忙しいですよ。
ザイラー/友だちは大切。夜になって、一人で儲かったとか赤字だったとかいう計算をしているより(笑)、こうやって友だちと座って ビールを飲んで、いろいろな話をしていた方が人間らしいし、楽しいでしょ。


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